プールや温泉に入れないってホント?タトゥーと日本のルール

日本の旅を計画中の方の中には美しい景色や美味しい食事、そして何より日本の文化を楽しみにしていることでしょう。その中でも、特に体験してみたいのが「温泉」ではないでしょうか?

しかし、体にタトゥーがある方は、「温泉に入れないって聞いたけど、本当?」と不安に思っているかもしれません。結論から言うと、多くの施設でタトゥーのある方の利用を制限しているのは事実です。

でも、心配はいりません。日本のタトゥー事情と、タトゥーがあっても温泉を心ゆくまで楽しむためのヒントを、この記事で分かりやすく解説します。

日本でタトゥーがNGな場所があるの?

タトゥーや入れ墨があると、温泉以外のさまざまな施設でも入場を断られたり、利用に制限がかかったりすることがあります。これは、日本の社会に根強く残るタトゥーに対するネガティブなイメージが主な理由です。

ここでは、タトゥーや入れ墨がNGとされている代表的な場所をいくつかご紹介します。

温泉やプール、海水浴場

多くの温泉やホテル併設のプールでは、タトゥーのある人の利用を制限しています。また、一部の海水浴場でも、自治体や地域の条例、あるいはビーチ管理者の判断で、タトゥーの露出を禁止している場所があります。

フィットネスクラブ・スポーツジム

多くの大手フィットネスクラブでは、タトゥーのある人の入会を制限しています。特に、大浴場やシャワールームが併設されている施設では、その傾向が顕著です。

高級レストラン・ホテル

一部の高級レストランやホテルでは、ドレスコードの一部として、タトゥーの露出を制限している場合があります。特に、フォーマルな雰囲気を重んじる場所では、タトゥーが見えないように長袖のシャツなどを着用することが求められることがあります。

公営競技場(ボートレース場、競輪場など)

公営競技場でも、タトゥーの露出を制限する場合があります。これは、暴力団との関係を排除し、健全な運営を保つための措置です。

アメリカでも、ビジネスやフォーマルな場では、タトゥーを見せないことが一般的です。たとえば、弁護士、銀行員、医師などの職業では、特に顧客や患者と接する際に、タトゥーをスーツや長袖で隠す人が多いです。
特に、宗教色が強く保守的なコミュニティでは、タトゥーに対して否定的な見方が根強く残っています。

それと似たような傾向で、日本では社会全体が保守的であり、他人が大勢いる場所はフォーマルな場所と考えられています。
そのため、タトゥーを見せることを禁止している施設があるのです。

タトゥー(Irezumi)の印象が悪いのはなぜ?

海外でファッションや自己表現として広く受け入れられているタトゥーが、なぜ日本ではいまだにネガティブなイメージを持たれ、社会的に制限されることが多いのでしょうか。その理由は、日本の長い歴史と独特な文化に深く根ざしています。

犯罪者への「入墨刑」としての歴史

日本では、タトゥー(Irezumi)はかつて「入墨刑」という形で、罪人であることを示すために使われていました。
150年以上前の時代では、犯罪者に腕や額に特定の模様や文字を彫る刑罰が科され、その入れ墨は「社会的な烙印」となりました。
この刑罰は、一度入れたら消せないため、その人が社会に戻った後も周囲の人々に「罪を犯した人物だ」と一目でわかるようにするためのものでした。
この歴史的な背景が、タトゥーに対する「犯罪者」「反社会的勢力」という負のイメージを定着させてしまいました。

ヤクザ(暴力団)との結びつき

ヤクザがタトゥー(刺青)を入れる理由は、その社会における特別な意味合いにあります。
タトゥーは、まず一般社会との決別を意味します。一度タトゥーを入れれば、一般的な仕事に就いたり、温泉やプールなどの公共施設を利用したりすることが難しくなります。この行為は、一般社会には戻らないという強い決意を周囲に示すものです。
また、長時間の苦痛を伴うタトゥーは、男としての見栄や自己顕示欲を満たす手段でもあります。痛みに耐え抜くことは、忍耐力や度胸の証明となり、組内での地位や信頼を得るための重要な要素となります。

さらに、タトゥーは威嚇の象徴としての役割も持ちます。「ヤクザのシンボル」である刺青を見せることで、他の人間を威圧し、自分たちの力や存在感を示すことができます。
このように、タトゥーは単なる装飾ではなく、暴力団社会で生きていくという覚悟、そして自らの力を示すための重要なシンボルとなっています。
このため、タトゥーは恐怖や威圧感を与えるものと見なされるようになり、温泉やプールなどの公共施設では、他の利用客が安心して利用できるよう、トラブルを未然に防ぐ目的でタトゥーのある人の入場を一律に断るルールが広く設けられるようになりました。

「野蛮」と見なされた明治時代の禁止令

明治時代に入り、日本が国際社会に加わる際、西洋諸国からタトゥー文化が「野蛮な習慣」と見なされることを懸念し、政府はタトゥーを法律で禁止しました。
これにより、タトゥーは日本の表舞台から姿を消し、一部の限られた人々の間でのみ受け継がれる文化となりました。
これらの歴史的な経緯から、タトゥーは単なるファッションではなく、「社会的な負の側面」と深く結びついて認識されるようになったのです。

もちろん、近年は若い世代を中心にタトゥーに対する認識は変わりつつあり、「ファッションやアート」として楽しむ人も増えています。しかし、歴史的な偏見が完全に消えたわけではないというのが、日本のタトゥー文化の現状です。

日本でも変わりつつあるタトゥーに対するイメージの変化

日本において、タトゥーに対する社会の認識は、少しずつではありますが確実に変わりつつあります。

世代間の意識の差

タトゥーに対する考え方は、世代によって大きく異なります。若年層では、海外文化やSNSの影響もあり、タトゥーを「ファッション」「自己表現」「アート」として肯定的に捉える人が増えています。一部の調査では、日本の若年層の多くが「タトゥーの規制を緩和すべき」と回答しています。

観光業での対応の変化

訪日外国人観光客の増加に伴い、タトゥーに対する受け入れ状況は大きく変わり始めています。多くの外国人観光客が温泉やプールを楽しみにしていることから、タトゥーがあっても利用できる「タトゥーフレンドリー」な施設が全国各地で増えています。
観光庁も、ホテルや旅館に対して、タトゥーを入れていることだけを理由に入浴を拒否しないよう促す通知を出しています。

もちろん、まだタトゥーが社会全体に完全に受け入れられたわけではありません。特に公共の場では、タトゥーに対して否定的な見方を持つ人がいることも事実です。しかし、世代交代やグローバル化の影響を受け、タトゥーに対する日本の考え方は確実に「タブー」から「多様な文化の一つ」へと移行しつつあります。

それでも温泉やプールを利用したい!

近年、外国人観光客の増加に伴い、タトゥーに寛容な施設が増えています。インターネットで「タトゥーフレンドリー 温泉」「タトゥーOK 温泉」などのキーワードで検索すると、情報がまとまったサイトが見つかります。

最も確実に温泉を楽しむなら、貸切風呂や家族風呂、または客室に露天風呂が付いた旅館がおすすめです。これらは他のお客さんと一緒になることがなく、家族や友人のみで気兼ねなく楽しむこともできます。

日本の文化を尊重し、これらの方法を上手に活用すれば、タトゥーがあっても日本の温泉やプールを十分に満喫できます。旅の計画を立てる際に、ぜひ参考にしてください。

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